トランジスタの意外な特長
トランジスタは増幅作用があり、ベースに微弱な電流を流すと、それが数100倍になって本流=コレクタ-エミッタに流れる
というのがトランジスタでした。
つまり、微弱な電流で大きな電流をコントロールする
例えば ベースに 0.2mA を流してみると 増幅率hfe 200倍なら、ベースにわずか0.2mA 流すと ×200倍 でコレクタには40mA の電流が流れることになりますが、正確にはそう単純に考えるわけにもいかないのです。
ここから、個々のトランジスタの中身の働きの話になります。
グラフを持ち出してややこしい話をするようですが、電流が200倍になること、、実際はどうなんでしょうか?
トランジスタ 2SC1815 のデータシートの Ic - Vce、IB のグラフです。

一番下の曲線を見ると IB=0.2mA
となっています。
これがベース電流を0.2mA流したときの
このトランジスタの動作です。
そのとき、縦軸Icを読むと,
コレクタ電流は 約35mA程度 になっています
つまり このトランジスタは、 IB=0.2mA → Ic=35mA
のコレクタ電流が流れる ということを表しています。
トランジスタの基本

ベースに IB=0.2mA を流すと
コレクタに Ic=35mA が流れることになります。
それでは、電圧は何ボルトにしたら Ic=35mA になるのでしょう?
上の増幅率が×200 では ベースが×200倍になるというだけで、電圧にはぜんぜん触れていません。
電圧が1Vでも10Vでもいいというわけにはいかないでしょう。
トランジスタの電圧と電流

この回路の電圧(Vce)は 何ボルトしたら
Ic=35mA
なのでしょうか?
2SC1815 Ic-Vce、IB のグラフ
グラフの一番下の曲線、 IB=0.2mA の縦軸を見てください。
IB=0.2mA 流すと
→ Ic=35mA 流れますが、
そのときの横軸を見ると
電圧(Vce)1~5V の時は
Ic は変わらず
ほぼ一定の約Ic=35mA になっています。
これは、ベースに IB=0.2mA を流すと
電圧が 1Vでも 5Vでも Ic はほぼ一定のIc=35mA 流れる
ということを表しています!?
今度は、ベース電流を大きくして
IB=1.0mA を流すと Vce 2Vのとき グラフから コレクタには、
約Ic=110mA 程度が流れる
そして、ベース電流はそのまま 電圧を2倍に上げてVce:4Vにすると コレクタには約 Ic=125mA 程度が流れる
と 電圧を2倍に上げても、電流は少ししかあがりません。
これでは、いままでのオームの法則が通用しません!
つまり、まじめにオームの法則で考えようにも、オームの法則が成り立たない特長を持っています。
これが、全くリレーなどと違うトランジスタの特長で、半導体にはこのようにまともにオームの法則が成り立たない特長があります。
しかし、ベース電流を上げると一気にコレクタ電流も増えます。ベース電流を上げるとそれにだいたい従って本流=コレクタ電流も増えるので、
トランジスタはこのベース電流でコントロールするのです。
まず、トランジスタのこのような特徴を覚えておきましょう。
でも、オームの法則は超えられない
「 いままでのオームの法則が通用しません 」
とありましたが、トランジスタでもやっぱりオームの法則は超えられません。
トランジスタの増幅率からだけ見るとベースに微弱な電流入れると、
増幅率が×200 では ベースが×200倍になります。
オームの法則で回路計算
トランジスタを使わずに、抵抗に普通に電気を流してみると
これだと 5V/200Ω = 25mA の電流が流れます
普通の計算:オームの法則です。
電圧÷抵抗 = 電流
トランジスタで回路計算
これをトランジスタでON、OFFさせるようにし、ベースに1mA流してみた場合
何も考えず、単純に増幅率から流れる電流を計算すると

1mA ×200(増幅率)
= 200mA
(ベース電流 × 増幅率 =コレクタ電流)
200mA 流れることになります!
しかし、こんなことは起こりません。
というわけで、トランジスタでもやっぱりオームの法則は生きていて、トランジスタはベースで蛇口を調節するので、蛇口全開で出る水の量を、蛇口を調節してもそれ以上増にやすことはできません。
本流のオームの法則は超えられず、頭打ちになります。
トランジスタの増幅作用は、送り込んだものを×200倍とかに自動的にしてくれる魔法の半導体ではなく、蛇口をひねって大きな電力をコントロールする。。。
こんなところからもなんとなくトランジスタの増幅作用の働きがみえてきます。
このへんは前回の
☆トランジスタのスイッチング回路とは☆ も参考にしてください。
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