電源回路について
電源回路を考えてみるわけですが、楽しい電子工作としては、これほどつまらない工作もなかなか無いのでは。。と思います。
なぜなら、作ったところで電圧が来て、電圧を安定供給するだけという機能で、何が動くワケでも光るわけでもない、、、しかし電源は大切
トランスが出てきて、交流を変換して、保護回路がこうで、特性は、、というような話しは一切なく、
単にまず9Vの電源があって、そこから回路に使う5Vの電源をヨチヨチ作ってみるという説明です。
でも電源回路の特徴に少しばかり気が付くのではと思います。
まずは分圧で電源を作る
9Vの直流の電圧があってこれをを降下させてまずは5Vの電源を作る、、、このとき電圧を変えるなら何度も出てきた分圧が便利そうです。
たとえば4KΩと5KΩで分圧すると こんな回路になります。
これでA点とグランドを引き出せば、何度も出てきた分圧で5Vです。
この電源に機器を接続
この分圧の電源に、たとえば5Vで動くブザーをつなげてみます。電池の代わりにこの分圧電源にする。。。
電気機器は、何か仕事をすると必ず電流を消費するので回路図での説明などでは ”負荷” という名前にされて、抵抗に置き換えられて説明されることがよくあります。
5Vで動く機器のブザーが仮に5mAの電流を消費するなら
R=5V/0.005(5mA) =1KΩ
の抵抗をつないだと同じように考えられるので、ここでもブザーを負荷1KΩの抵抗にしてみます。
負荷1KΩの抵抗にするとこんな回路になります。
ここで再び、合成抵抗の式で計算すると
分圧は崩れ、合成抵抗A点とグランドは 5Vにはならず、ブザーの代わりの負荷にかかる電圧は5Vではなくなっています。
この分圧で作った電源に”負荷(何かの電子機器機器)”をつなぐまでは 電圧は5Vですが、負荷をつなぐと合成抵抗になり電圧が変わってしまいます・・
また別な違う”負荷”をつなぐと、その回路全体の抵抗値に応じて電圧が変わってしまうのです。
つまりこの分圧で作った電源は つなぐ機器によって供給する電圧が変わってしまうのです!
ここで ふと 電源 というモノを振り返って考えると
(交流ですが)家庭用の100V電源をみても、電気をいっぱい喰うクーラーや、電気をたいして喰わないラジオなど、様々なものがつながれるのが汎用の電源です。
何がつながれても約束した100Vを供給するのが電源で、接続する電気機器によって、80Vになったり、50Vしか出ない というのでは 電源として失格です
そして、電源の電圧が変動したりすると、接続した機器にも影響がでます。
こう見ると、安定した電圧を供給する電源てけっこう大事です、電源は縁の下の力持ちと呼ばれる所以(ゆえん)です。
そして、つなぐモノによって、同じ電圧でも電流が多く流れたり、少なかったりしますが、何がつながれても、供給する約束した安定電圧を供給するのが電源なので、つなぐものによって電圧が変わらない、つまり 電源には定電圧回路の要素 が必要なことがわかります。
(定電流電源というものもあります--これはつながれたものに一定の電流を流すという電源)
定電圧回路
というわけで定電圧回路を作ってみます。お手軽な定電圧として知られるツナ(ツェナ)ダイオードを使った回路で電源にしてみます。
ツナ(ツェナ)ダイオード
これを使って5Vの電源を作ります。ツナダイオードはダイオードではわざと電気が流れないような方向に接続します。
ダイオードなので逆向きにつけてもこれでは電気は流れないのですが、電源の電圧をどんどん上げていくと、ある電圧をすぎると突然電流が流れ始め、そのまま電圧を上げていっても、電圧が変わらないように作用するのがツナダイオードです。(定電圧ダイオードとも呼ばれる)
5V用のツナダイオードを使うと、5Vの定電圧にしてくれます。
これを使って、電源をつくるとこのようになります。
ツナダイオードによっても異なりますが、15mA程度以下の電流を流す場合なら
単純に普段はツナ側への電流は微少なのでツナへの電流を考えないと、
抵抗R値はこのように計算できます。
R |
= |
Vin - 5V(ツナ電圧)
Io |
= |
9-5(V)
0.015(15mA) |
= |
266Ω |
しかし、このお手軽なツナダイオードには欠点があり数十ミリを超える電流を流し始めるとその定電圧性がゆれて、崩れ始めます。
つまり大きな電流を流せない電源 です。
ツナダイオード電源の場合
ツナ(ツェナ)ダイオードは、本格的な電源には向いていませんが、それで考える場合
Ioはつながれた機器に流す電流ですが、ツナも定電圧を作るのに電流がいるので分岐してツナ側にも流れるので 実際は上のIoより少しだけ多めの電流を流す必要があります。
流れでた電流はツナ方向に流れるIz と 電源出力に流れるIo の2つに分岐して行くので 厳密に抵抗Rは こういう式になります
R |
= |
Vin - 5V(ツナ電圧)
Iz + Io |
あんまりツナを汎用的な電源にするのには向いていませんが、ツナの電源を作るなら
何がつながれるかわからないのが電源なので、電源につながる機器(負荷)を変えたとき、流れるIoが小さくなる機器(負荷)をつなぐほど、ツナ側に分岐して流れて、流れるIzが大きくなります。
ツナダイオードにもよりますが、許容電流以上が流れないように抵抗値を決める必要があります。
0.5ワット(P=500mW)のツナを使用するなら、マージンを見て0.3Wぐらいにしておきます。
ツナに流す電流は最大でも0.3W以内
P=I・Vなので I=P/V
Iz(maz) |
= |
P
V(ツナ電圧) |
= |
P
V(ツナ電圧) |
= |
0.3(w)
5(V) |
= 60mA
60mAの電流が流れるような 抵抗Rは
R |
= |
9 - 5
0.06 |
= 66.7Ω
この抵抗値にすると、電流全部がツナ側に流れたとしても、ツナの許容範囲内になるのでこの辺の抵抗値でツナ電源を作る。 電流が大きくなると不安定になります。
しかしツナダイオードで汎用電源を作ることは実際 向いていない
定電圧回路をさらに改良
さらに改良します。
このツナの定電圧を直接電源の安定に使うのではなく、トランジスタのベース部を安定させるのに持っていき、トランジスタを使った定電圧回路にします。これでさらに大きな電流を流せます。
エミッタフォロア(コレクタ接地)と呼ばれる回路のベース部に、このツナの定電圧回路を持っていってベース電圧を安定させます。
さらに、電圧が変動して出力されると それを、
- 上がりすぎたら→下げる
- 下がりすぎたら→上げる
と調節する回路を出力電圧から、取って来て調節機能を付けます。
調節するのにオペアンプを加えると、出力が上がりすぎると→下げる ように働くのでさらに安定がよくなります。
また、トランジスタのエミッタにツナダイオードを入れ、さらにまた定電圧回路で調節するタイプの回路も定型としてよく使われます。
これなら、電源回路として、安定もまあよく使えそうです
でもまた、ふと考えてみると、
この回路は三端子レギュレターの中身の回路にどんどん近づいています(ICとは、こんな回路を小さくまとめた集積回路なので )
三端子レギュレターとは、主に小電圧電源に使われるICです。このタイプの回路は三端子レギュレターの中身にあります。。。
(世の中のどこでも売っているモノを自分でせっせと作るのは止めましょう)
しかし、大きな出力の安定化電源を作る場合、このような系列の回路が使われるので電源回路の基本的な理解に役立ちます。
三端子レギュレター
電圧回路はやっぱり最初は三端子レギュレターに行き着きます。
どこでも電源回路に使われる理由がよく納得出来ます。(一番よく使うアナログICかもしれません)
三端子レギュレターは主に電源に使うためのICです。何も考えなくても使用方法通り電圧を入力に入れて、出力から取り出せば、電源に必要な要素を備えています。
結局、実際自分で作る回路では電源に三端子レギュレターを多用することになるのですが、大きな電流を扱う電源には三端子レギュレターではなく、トランジスタなどを使った定電圧回路が基礎になるので、ムダな方向を考えたようですが、やはり上の回路も電源回路の基礎としては重要だと思います。
*注意*
電源回路には、シリーズ、スイッチング式などありますが、ここで紹介したような電源回路は電圧を降下させた分、発熱があります。
トランジスタの増幅の説明のように、無いものが突然わき出て来たりすることがないように、あるものが都合よく途中で消えてなくなることもありません。電圧を回路途中で下げるとその分が熱になります。
これでICが壊れることもあるので入力と出力での電圧差がある電源には放熱対策も考える必要があります。
発熱が少ないのがスイッチング式ですが三端子レギュレターのようにはいかずノイズ等出力電圧の特徴に違いがあります。
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